「おっさん、大丈夫?」ミツルがきいた。「おっさん、うなされてたけど……」
「大丈夫。悪夢を見ていただけだ」私は目を閉じたままこたえた。
そう、私は悪夢を見ていただけ。そんなことはわかっている。しかし、あの夢は何度見てもなれることはない。疲れているのだろう。
「もう1日だけ休む?」ミツルが言った。
「いや、そろそろ捜査をはじめないと依頼主に悪いだろ」
「おっさん真面目になったね」
「まあな。これでも探偵としてやっているからな」私は体を起こしてミツルのほうを向いた。
ミツルとコンビを組んでから約8ヵ月。麻雀を通じて探偵の仕事を続けてきたのだが……
「さすがに夏は暑いものだ」
「そんなの当たり前だよ」
「それにしても暑すぎるだろ」
「おっさんって、暑いの苦手なの?」
「もちのロンだ」
「アイス買ってこようか?」
「ミツル、まだ金があるのか?」
「え……」ミツルはポケットの中から財布を取り出した。
私の読みが当たりならば、やつの財布の中身は空っぽ。もうアイスを買っている余裕もないはずだ。
ジャンル:ミステリー・推理
作者:mican
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